「個を消さずに群れるダンス」と「粋に狂うステップ」

多田慶子


 

「ダンス☆ショー稽古は、これまでの振り起こしから、踊りの質を高めていく稽古に移行していきます」

と、運営委員会から届いた夏にふさわしいクールな叱咤激励を鞭に、7月の稽古が始まった。

 

 

この日の練習はまず《クワイ》と呼ばれる作品。

 

 

人を食ったような飄々とした編曲の「クワイ」行進曲にのり、一列縦隊で次々とダンサーが現れる。

シンプルなフレーズの繰り返しが高揚感を生む振り。

この点はベジャールの《ボレロ》にも共通するが、阿波踊りの方が魔力の質は近い。観ていると踊りたくなる。

行進といっても、個を消したマーチングとは違う。でこぼこと不ぞろいな個性が『主体的に一体になって連なる』面白さ。美香&ダンサーズ作品の特徴の一つだと思う。

たとえば、粒の色と形にムラがあるのにすべてに同じ旨みが宿る焼きとうもろこし。

どこも捨て置けない、皆(全体)で1本の美味い焼きとうもろこしになれたら素敵だ。

 

 

私がその一粒になれなかったら、この演目には出演辞退して、観る側になろう。だってこれはダンスショーの中でも代表作のひとつだもの(個人的意見)。

なあんて、他薦されているわけじゃなし、自ら出演希望を出したのだ。

どうやってこれら各作品の出演者を決めるのか?

今日も他の演目だが「何人でやる?これじゃ多すぎない?」「オーディションしましょう!」の声が出た。

休憩中「出られたら出たい」じゃなくて、「ゼッタイ出るんだ!という勢いで練習に望まなきゃ」と拳を握って、ほかの人を励ます声も聞こえてきた(う、私に言ってるのかと思った)。

稽古が積みあがり構成が出来上がってくれば、出演者は導き出されそうな気もするが・・・わからない。

ヒエラルキーを嫌った美香さん。いつも円陣で話し合いを重ねた。

それでも私たちは鶴の一声を頼りにしていたと思う。

横に並んだチームである我々『残された人々』の難問が待っている。

 

 

お次は《Sing》の稽古。

 

 

この作品はご機嫌なリズムステップが連なって現れる。通しで踊った後、何人かから「あそこは音たてて踏みならしちゃ駄目って言われたよ」「ドンドンと頑張っちゃあ(ダメ)」反省点が出る。

ホリが人懐っこいいつもの笑顔で「皆にフレッド・アステアのミュージカル映画見てほしいなあ。あの『粋な軽るみ』と美香さん独特の『狂う』=『壊れる』が融合すると(この作品は)いいと思うんだよね」。

「上半身と下半身が別人格みたいに影響受けず動こう」の声も。

 

 

ハリウッドのミュージカル映画全盛期を背負った天才ダンサー、アステア。洗練と品格を備えながらも「粋」を極めたダンスにマイケルジャクソンも憧れたという。

美香さん自身の動きはひとかけらの無駄も無く、観る人に媚びなく次へ歩む。アステアが観たなら、握手を求めたのではないか。ただし、その軽やかさと「重さ」が隣合って息づいている。

おまけに皆がそろって軽快ステップやダイナミックな振りで踊ったかと思うと、その安定を即興ソロが壊して出現する。踊ってみると、その難しさと面白さを強く感じる。

「難しすぎることを軽々と」。

こんな特徴(ミッション)がよく出ているのが『SING』だと思う。

12月をお楽しみに。

 


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